新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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ギガタウン 漫符図譜

 
「4コマ漫画×現代版鳥獣人物戯画」というのがメインに謳われているが、
これはあくまで叙述の形態に過ぎない。
 
本書の神髄は、この不思議なサブタイトル「漫符図譜」にこそある!
 
漫符」って言葉は初めて聞いたんだけど、目が回ったときのグルグル、
ひらめいた時の電球、動いた軌跡の線など、漫画特有の表現記号のこと。
 
この一つ一つを一ページの中に、漫符とその意味の解説、
そして用例として、4コマ漫画で表されているという構造になってる。
 

つまり本書全体が本邦初の"漫符事典"になっているのです。

 
この着想がユニークだし、一冊の書物としての価値観をぐっと高めている。
しかも冒頭に挙げた叙述形態のユニークさも、更に魅力マシマシにしてくれている。
 
これは傑作!!!
 
自分は何の資格も権限も持っていないけれど、
本書にはなんか漫画の賞を与えて上げて欲しいよ。
 

異星の帝国の名探偵が地球に行こうと、ギンガの昔の密室は抜けない

4日~7日でブックオフ20&%オフセールやってるので、そりゃ行くっきゃないわなと。
プライベートな用事があった4日と、一日中雨の今日を除いた二日は歩きing兼ねてのお出かけ。
一昨日はあざみ野まで歩いて、そこを皮切りに4カ所ブックオフ回って、23,006歩。
昨日は電車で淵野辺に出て、2カ所のブックオフ回って、13,765歩。
 

ミステリー編以外もあるとは知らなかったな、の1.。2.はこれで現在出ている巻は全て入手。評価は無茶苦茶高いこの漫画化なんだけど、版元のHPを見ると、版権の問題が解決しないとのこと。もう5巻が出ることはないのかなぁ。
 

原作は自分のミステリ人生を決定づけた思い入れの強い作品なので。全4巻のまずは前半。
 

  • 一昨日のブックオフ相模大野店
    1. チ。―地球の運動について― 第1集~第8集(完) 魚豊 ビッグC ¥2,300

これはとても読んでみたかった作品。¥2,400以下で見つけたら買おうと思ってた条件を満たしてくれたので。
 

  • 一昨日の町田ブックオフ
    1. カラオケ行こ! 和山やま ビームC ¥66

マンガ沼で何度も紹介されてて、読んでみたかった作品。
 

1.は「惑星のさみだれ」が結構良かったので、短編集なら是非とも読みたい。2.はコンセプトがちと謎だけど、どんな風に昔話と絡めてくるのか興味はある。3.はなかなか出物が無いので、持ってない巻が見つかったら超ラッキー。
 

出版された当時は評判になった原作だけど、あんまし好みの作品ではなさそうなのでスルーしてた。まぁこういう機会にコミック版で。
 

SFマンガ傑作選

 
収録作は手塚治虫「アトムの最後」、筒井康隆「急流」、松本零士「ヤマビコ13号」
萩尾望都「あそび玉」、石ノ森章太郎「胎児の世紀」、諸星大二郎「生物都市」
竹宮恵子「ジルベスターの星から」、山田ミネコ「冬の円盤」、横山光輝「昆虫惑星」
佐藤史生「金星樹」、佐々木淳子「リディアの住む時に…」、
高橋葉介「ミルクがねじを回す時」、水樹和佳子「樹魔」、星野之宣「残像」の全14編。
 
巻末の解説(「SFマンガ史概説」として書かれていて、これだけでも必読と言えよう)で
最初に語られているように、本書はさすがにオールタイムベストの選集ではない。
黄金期の70年代を中心に、メジャー作家の名篇を選んだもの。
隠れた逸品の発掘でもないため、自分でも半数は既読作品だった。
 
有用な起点を示すものというのも選考基準に挙げられているのも納得の、
里程標となるような傑作ばかりで、SFファンにとっても、マンガファンにとっても、
必携の名アンソロジーと称して良い作品集だと思う。
 
そんな傑作揃いの中からベスト3を選ぶのもおこがましい気もするが、いつもの恒例なので。
 
ベストはタイムトラベルではないタイプの時間物ロマンスの傑作、佐藤史生「金星樹」で。
第2位は宇宙開拓の悲劇やロマンスを叙情的に綴った竹宮恵子「ジルベスターの星から」で。
第3位は太古の地球というハードSFから感動に繋がっていく星野之宣「残像」で。
次点は萩尾望都「あそび玉」と水樹和佳子「樹魔」かな。
 

眠れなくなるほど面白い 図解 ヤバい間取りの話

 
変わり種の部屋の間取り図を集めた作品。
昔流行った「間取りの手帖」「ヘンな間取り」などと同趣向の本。
「変な家」も最初はこの類いの本かと勘違いしちゃったんだよな。
 
こういう趣向にまずまずハズレは無いもので、そこそこ楽しめるのは間違い無し。
暇だから読んだわけではないんだけど、暇つぶしにはもってこいの本だろう。
 
ただ、思ってたよりは真面目な作品。
コメントは的確なんだけど、ツッコミでくすっと笑わせてくれるようなものではなかったな。
 
章立ては以下で、これに「ドラえもん」などの有名漫画の間取りや、ちょこっと雑学コラムあり。
 
第1章 意味がわかると面白い間取り
第2章 滅茶苦茶な配置
第3章 致命的設計ミス?
第4章 こだわりすぎた間取り
第5章 規格外の大きさ、迷惑すぎる形
第6章 迷路、ダンジョン系間取り
第7章 特徴的なシルエット
 
やはり間取りの面白みとしては(単純な表記ミスとかではなくて)
2章、4章が一番楽しめたかな。
 

君待秋ラは透きとおる

 
何やらかすかわからない作者らしい作品かもしれない。
 
異能力バトル。
 
鉄筋生成、猫化、空間統御、透明化などの「匿技」の持ち主たちを集める「日本特別技能振興会」。
この異能力バトルを軸に置いて、戦後からの巨大な闇をベースにして、
謎解きの面白さをも組み込んだ作品に仕上げている。
 
ユニークな作品で、一見プロット的にも万全に思えはするんだけど、
気になった点が幾つかあって、すっきり出来なかったのが、個人的には減点ポイント。
 
軽いところから言うと、外人部隊が単にトレーニングのためだけに消費されて、
物語的には絡んでこなかったところ。
 
でもって、最大のポイントは肝心の動機に関する部分。
完全な消失」が匿技発現の条件になってるという前提なんだけど、
戦時中」のエピソードと矛盾しちゃってるんじゃないってところ。
角曲がる度に毎回遺体無くなるほど焼失」してたわけじゃなかろうもん。
 
……ってのが気になって、気になって、採点はギリ7点を切る6点で。
 
細かいことが気になってしまうのが、僕の悪い癖。
 
ってとこで。