新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

本格ミステリ書評サイト「幻影の書庫」の旧管理人のブログです。カテゴリー欄の全レビュー索引より、書評、映画評、漫画評、その他評の全一覧リストを見ることが出来ます。同じくカテゴリー欄の年間順位表より各年度の新刊ミステリの個人的ランキングを確認出来ます。

あの商店街の、本屋の、小さな奥さんのお話。

 
もちろん、これはおとぎ話。
 
純粋なおとぎ話として読めば、とってもいい話のように思えるんだけど、
何かどこかしらちょっと違う気がしてしまって、
感動どっぷりな感じにはなれずにいてしまった。
 
何に違和感を覚えていたのかは、自分でもよくわからない。
純朴なだけの奥さんが時々ものすごくスーパーマンだったりするとこ?
恋の知らなさと、恋の一途さとしか思えないところが同居してるとこ?
こんな並び方が本当にいいのか、そうは思えないと思ってしまうとこ?
本書の全てが、全ての人間が、ただただ善意のみで成立しているとこ?
 
う~ん、こう色々と書いてしまうってことは、そういうところが
ちょっとずつ積み重なって、何かが違うという違和感になっていたのかもな。
 
おとぎ話なんだから、ただそう読めれば良かったのに。
 

泣ける疑惑の黙劇

昨日は雨も上がって、気温も下がってたので、久しぶりに町田まで歩きing。18,281歩。
 

1.は捨て猫を拾ってあげてる不良少年を見かけたときのようなギャップ萌えというのか、普段は下品でBLでくだらない作品ゆえに、たま~~にあるいい話がよりプラスされて良く思える効果。2.は豪華装丁版の選集第2巻。前巻の「夜よさよなら」は哀切感を覚える沁みる話ばっかりだったが、この巻はどういうカラーなんだろうか。
 

5のつく日曜日ってことで、204ポイント還元の実質830円。
おっと、これが7月に刊行されてたのを忘れかけてしまってた。あぶない、あぶない。買うと読む時期がかえって後ろに延びてしまうジレンマはあるが(図書館の返却日に追われている日常だからな)、さすがにこれは買わなくちゃいけないや。短編作家としては歴代最も好きな作家の一人。戸田さん、本当にありがとうございます。創元の編集の方にも感謝!
 

トムソーヤ

 
マーク・トウェインの「トム・ソーヤーの冒険」をベースに、
少女マンガとして再構成させた作品。
 
そういう意欲作としての意味合いはよくわかるんだけど、
中途半端に大人な女性を主人公に据えることが、
さほど成功してるようには思えなかったんだよなぁ。
 
かえって成長物語として描けないような形になってるような気がして。
 
そんななんで、いまいちフ~ンとしか思えなかった作品。
 
当事者ではなく、傍観者とか、狂言回しとか、
主人公の側に立つのではなく、読者の視点を代替するような
役割だったらどうだったんだろうな、と思えた。
 

好きになるひと―高橋しん初期短編集完全版

 
初期短編集といいながらも、全編完全リメイクで描き下ろされた作品集。
 
作者があとがきで書いてるように、普通は表紙だけ描き下ろしで中身は昔の画ってのが基本。
「まんが読みとして痛い目にあってきた」と書いてあるけど、
自分としてはそれが読者の期待値でもあると思うんだけどな。
 
作品集としての完成度は上がってるかもしれないけど、
初期短編集という意味合いが凄く薄まってしまってると思う。
 
せめて一作でもいいから、昔の作品そのままも同時掲載してあったら、
作者の今と昔の違いを明確に目の当たりにすることができて、
非常に興味深い作品集になったんじゃないかと思うけどね。
 
完成度は上がってるかもしれないけど、作品として心惹かれたものは
あまり無かったしなぁ。
これなら、昔はこんなだったんだぁ、という興味で読めた方がありがたかったかと。
 
一応ベストだけ選んでおくと、「TWO HEARTS」で。
 

invert 城塚翡翠倒叙集

 
二作目はまさかの倒叙作品集。
 
前作を読んでない人は絶対に読んじゃダメですよ。
あの大傑作を読む前に、ネタバレ読んじゃうなんて、こんな勿体ないことはありません。
必ず本署の前には「medium 霊媒探偵城塚翡翠」を読んでおきましょう。
 
本書には三本の中編が収められている。
それぞれ正真正銘独立の作品ではあるんだけど、
前作のあの最終話で読者の油断をあざ笑う、とんでもないうっちゃりをカマしてくれた人だからね。
皆様もゆめゆめ油断なされぬよう。
 
とはいえ、さすがに前作の持つ驚きの意味合いとは、全くの別物。 
 
倒叙作品集としては本格度は高い作品ではあるけれど、やはりこの形式の中では、
ロジックは地味目にしか発動しないってこともある。そもそもの話ではあるけど。
(そういうわけで、個人的には倒叙作品を高く評価することはほぼ無い)
 
採点はせいぜい7点止まり。あれ無かったら6点にしてたと思うし。
 
ところで最後に物言い。古畑任三郎の解決編突入前のナレーション形式を
そのまんまなぞってるのが、非常に安っぽく感じられた。
ド素人のネット小説じゃないんだからさ。
「相棒」の台詞を織り込んだりしてるとかと同じように、あくまでオマージュの
範囲で留めておいて欲しいと思うよ。これじゃパロディになっちゃってる。