新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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わずか一しずくの血

わずか一しずくの血

わずか一しずくの血

凄い小説ではある。凄いミステリでもある。
 
そして不思議な小説でもある。
 
まずは幻想小説的な出だしに戸惑う。
そして官能小説的な描き方に戸惑う。
 
やがて初期連城のような壮大な構想のバカミスであることがわかり、
ただ、それにも残念ながら戸惑いを覚えてしまう。
 
終始違和感を感じたまま、最後まで拭い去ることが出来なかった。
 
動機が全く理解できない・共感できないものだったから、
この凄すぎる構図が、どうしても説得力をもって迫ってきてくれない。
 
初期連城は、この動機と構図とが非常に密接に結びついていて、
その心理こそが自然にどんでん返しを納得させてくれていたのに。
本作の心理はその役目を果たしてはくれていないと思う。
 
凄いけど、好きな作品にはなりようがない。
採点もどうしても7点は付け辛い。6点にしよう。