新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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ピコーン!

ピコーン! (IKKI COMICS)

ピコーン! (IKKI COMICS)

 
原作は未読だけど、大胆な表現力で、
コミック化として、一本の見事な作品になってるように思えた。
 
画も上手いなぁ。
ただ最初の哲也の登場シーンの目が死んでたので、
結構途中まで主人公が哲也を殺してしまった話だと思い込んでた。
無意味に画にミスリードされちまったなぁ。
 
まぁ表題作はわいせつなエログロ作品ではあるし、
(勿論そういうのも好きなんだけど、あんましストレートすぎる奴はなぁ)
描き下ろしの「スクールアタック・シンドローム」も暴力的な話だし、
あんまし話の筋としては惹かれなかったんだけどね。
それは青山景の問題ではなく、自分と舞城の相性の話なんだろうけど。
 
ところで、「ピコーン!」というのは二重の意味があるのかな?
そう思ってみると、ビックリマークもそれっぽく見えてこないか?
(贅沢を言えば、下の点は二つ欲しいところだけどね)
 

沈黙の狂詩曲

 
「喧騒の夜想曲」と合わせて、三年分の年間アンソロジー
編集方針への批判に関しては、そっちの方を見て貰うとして、
二冊比較すると、圧倒的にこちらの方が良かった。
本格ミステリ色高めの作品が多かったせいかもしれない。
 
ベストはやっぱ自分が選ぶと、こうなっちゃうしかないよな、な
大山誠一郎「事件をめぐる三つの対話」で。
既読作だったけど、やはり本格ミステリ的着想の飛びが素敵。
 
第二位もやっぱり、形式的には一番オーソドックスな本格ミステリに仕上がってる
宮内悠介「ホテル・アースポート」になってしまう。
 
第三位も本格で。結婚指輪というアイテム一つから、興味深い謎と、
推理の応酬を盛り込んで、最後は充分に飛び幅のある真相に導いてくれる
石持浅海「銀の指輪」だな。
 
次点も挙げておきたい。ダブル・ミーニングの連鎖で、僥倖的に
事件を解決するユーモア・ミステリ、川崎草志「署長・田中健一の執念」で。
 
他の作品も読み物的には結構楽しく、編集方針批判した割には、
意外に楽しく読ませて貰ったかも。割と7点に近い方の6点で。
 

町田ほろ酔いめし浪漫 人生の味

 
おっさん二人が、ただ居酒屋で酒飲むだけの話。
 
まぁ、でも、こちとらも終の棲家のつもりで家建てて、
ちょうど20年目の新参者の町田市民、
かつ、限りなくじじいに近いおっさん。
 
町田のあれこれを先輩市民(年齢はこちらが上だけど)の二人に教わりながら、
おっさん談義に共感しつつ、呑み会の末席に加わらせてもらった気分。
ほんわかと、ちょっと酔っちゃいましたわ。
 
お店はみんな普通の居酒屋みたいな感じで、
どうしてもここ行ってみたいとまでは思わせてくれなかったのが、
ちょっと残念だったけどね。
 

天使からのラブレター

天使からのラブレター (花とゆめCOMICS)

天使からのラブレター (花とゆめCOMICS)

  • 作者:杜野 亜希
  • 発売日: 1995/06/25
  • メディア: コミック
 
神林&キリカシリーズの二作品(表題作と「ブルー・レインに抱かれて」)と
女子高生怪盗物の「少女進化論」が収められた作品集。
 
少女漫画にしてはしっかりとしたトリックもあったり、
比較的ちゃんとした本格ミステリになってるシリーズの中でも、
評判の高そうな作品だった表題作。
何せ解決編と分かれていて、犯人当てクイズとして出題されたものだったらしい。
 
まぁトリックがわかりやすくて、それが犯人も示すものなので、
フーダニットとしては悩みようがない作品ではあったけど。
 
ただ、それでも暗号だとか、心情だとかの描き方とか、
作品としての構成だとかはしっかりしてて、たしかに完成度は高い作品だと思う。
 
もう一作の方のまさしく日常的な密室トリックなんかも、
ちょっと面白かったかも。それが作者の実体験というのも興味深かった。
 

スキエンティア

スキエンティア (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

スキエンティア (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

  • 作者:戸田 誠二
  • 発売日: 2010/01/29
  • メディア: コミック
 
「科学の女神」が見下ろす街で繰り広げられる、7編のSF短編。
 
これはとても良かった。
 
いずれも作品のとっかかりとしては、センス・オブ・ワンダー
まさしくSF的なガジェットで始まるんだけど、
その実、描かれているのは非常に”日常の話”。
 
だからこそ、主人公達の心情が、
実に親身に受け止められるのだ。
 
時には心に刺さり、とにかく全ての作品が沁みる。
救われた気持ちにもなり、胸に迫ってもくる。
優しくそばにそっと添うようにいてくれる。
そういう心情のサ行五段活用を味わえる作品達。
 
どれもいい作品なので、順位は付けがたいが、
無理矢理付けるとすれば、
1.ボディレンタル、2.覚醒機、3.ドラッグかな。
媚薬もクローンも落としがたいんだけどね。