新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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いまさら翼といわれても

いまさら翼といわれても

いまさら翼といわれても

久しぶりの古典部
 
これが何故か今の自分にはフィットした。
 
緩い日常の謎という構えは変わっていないし、
ミステリとして突出したようなところも無いんだけど、
何故かはまってしまった。
 
この作者は青春ミステリの書き手という一般的イメージが
あるように思うのだけど、そのイメージがもたらすような
素直ないい話みたいなのは、全然書かない人なんだよな。
 
ほぼほぼどの作品も人間の厭らしいところか、
痛々しいところを実に巧みに突いてくるものばかり。
 
一番青春ミステリっぽい本シリーズにしたってそう。
本作だって、厭さが滲み出たもの、
そこまでなくても苦さや脆さが感じ取れるものばかり。
 
清々しくないのに、でも清々しい。
 
きっとそこに惹かれてるんじゃないかと思う。
厭らしいのに、瑞々しい作品。
 
滅多に使わないけど、この言葉を使いたい。
うん、好きだ。
 
以前の座談会で直接質問した際に「全能感と無能感」という
隠し共通テーマがあったと伺ったことがあったが、
全能感振りきりというか、とにかく甘々方向に全開した作品を
一度読ませて欲しいものだなぁ〜
 
採点は7点。
昨年度の順位表の第3位に入れちゃおうっと。