新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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NHK 謎解きLIVE 英国式ウイークエンド殺人事件

12/7,8に二夜連続でBSプレミアムにて放送されたもの。
 

イギリスで人気の「体験型ミステリーツアー」。事件のシナリオが仕込まれたツアーに、犯人、被害者、容疑者、刑事を演じる俳優が客に紛れている。“探偵”としてツアーに参加する客は、次々に起こる事件を現場でリアルタイムに体験しながら刻々と変化する事態を“当事者”として観察して手がかりをつかみ、犯人を推理していく…というものだ。

 
この推理に挑むゲストが、なんと我等がノリリン、法月綸太郎。これにマキタスポーツ小島慶子を加えた三名。
途中の区切り、区切り毎に三つの証拠品が提示され、そのうち最も重要なものを選んでいくという趣向。これが最後の一回の証拠品選びを除いて、全てノリリンと一致した。犯人も含めて。おお、思考回路が一緒やぁ〜と、なんか嬉しく感じてたんだけど、それで二人とも真相に肉薄してたかというと、実はそんなことは決してなかった。たしかに犯人こそ当たってはいたけれど。
 
というのも、真相が明らかにされた後のノリリンの開口一番の台詞
「ずるいっ!」
に、全て集約されるかなぁ。
 
これは『推理』ではなく、『想像力』で解く問題。
実際に番組終わりの時にも、作者の言葉でそういうことが語られてたし(確信犯かいっ!)。
 
思わせぶりな多くの設定が、ほぼそのまま宙ぶらりんのまま放置。
「収束する」というミステリの解決編の醍醐味は一切感じられない。
いっぱいばらまいてある(だけの)筋のうち、作者の意図に合った一本だけを選び取らなければならない。
そこに通じる最大の手掛かりも、TV画面で見てるだけじゃ、気付くのは至難の業だと思うし。
片方の靴が脱がされてる謎も、初日の情報では想像力の範疇外(だよね?)で、悩んでも報われまい。リアルタイムで謎解きに挑んだ人にはご愁傷様と言いたくなる。せめて放送が二日連続だったのが救いだったろうな。
 
趣向自体はとても良く、謎解きに参加できる愉しみは味わえたので良かったけど、とにかくこの作者の本格観と、自分の本格観とが相容れなかったという感じだな。
日本の書き手でこういうのやってくれたら、無茶苦茶愉しめそう。
企画だけいただいて、次回は是非その線で。