新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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フリー・ガイ

08/22(日) イオンシネマ新百合ヶ丘にて鑑賞。
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とにかく気持ちの良い映画だったな。
 
おそらく誰もが心の奥底に持つ主人公願望を、
身体のどっかの片隅から掘り起こして、いい感じに刺激してくれる作品。
 
♪自分の人生の中では 誰もがみな主人公~
と、さだまさしに歌われて、その場では勿論納得するんだけど、
でも、その作品を読むのが自分だけってのは、やっぱり物足りないんだよね。
 
みんなが読んでくれるようなベストセラーの主人公でありたい、
程度の差はあれ、主人公願望ってやっぱりきっとそういうもの。
 
だから、だよね、こんなに爽快な気分になれるのは。
 
 
あともう一つだけ感想述べるとすれば、これ。
「そうか、20世紀スタジオって、今、ディズニーなんだね」
 
もう声立てて、ゲラゲラ笑わせてもらいました、とさ。
 

一日の最後に読みたい本。 奈知未佐子自選短編集

 
良かった。
 
しみじみと良かった。
 
これは宝物にしたくなるような作品集。
どこか懐かしく、ほっこりと暖かく、しんみりと切ない作品ばかり。
 
まさしくタイトルに納得。一日の最後にこんな作品達に触れられたら、
その日の残したくない全てのことを、清めの泉みたいに涼やかに洗い流してくれるだろう。
 
収録作は「迎え提灯 送り羽織」「風時計」「河童の水」「隅っこの椅子」
「影鬼」「ずずら豆の豆稲荷」「悲しい蝋燭」「グレイゴーのスタンプ」
「砂の時計」「風の糸車」「月の輪っか」「クルンカの橋」の12作品。
 
中でも「河童の水」「グレイゴーのスタンプ」の二編が出色。
前者は新しい創作昔話として、後者は新しい現代の寓話として、
泣けてなお、暖かい心になれる、とてもとても優しい作品たち。
 
ベスト3の最後の一編は、正直選べない。
勿論マイナスの意味じゃなくて、プラスの意味で。
だって、だって、どの作品も好いんだもの。
全部がベスト3です。
 

雷神

 
「龍神の雨」「風神の手」に続く、神三部作の完結編。
(あっ、それぞれに関連性は全くなく、完全な独立作品です。念のため補足)
 
その「風神の手」も傑作だったが、本作もそれに劣らぬ傑作。
 
久しぶりに道尾秀介の得意技でもあったダブルミーニングのミスリードの、
それもとびっきり強烈な奴を味わうことが出来たな。
作者が意図していたかどうかは不明だが、私は二本線に関しても同様だった。
手紙の宛先に二本線足して「幸人->南人」に書き換えられていた。
 つまりは記憶を失っていた主人公自身が毒混入の犯人だと、勝手に勘違いしてしまってた。
 便せんの方だけじゃなくて、封筒も見せてくれなきゃだわ、とか思ってたんだよね。

(伏せ字ばかりの感想で、申しわけないです)
 
最後の最後まで読者の心情を痺れさせてくれるし。
 
採点はやはり8点にするかな。
 

伝説の国の怪しい魔術師がLiveで豹の捕物で虐め絶命させると博物館に約束した終末の闇

さすがにこの季節、町田まで1時間半かけて歩くのは辛いので、
土曜日は町田まで電車で出て、相模大野まで歩くパターンで、ブックオフのはしご。
日曜日は朝一の映画観に新百合ヶ丘まで歩き。これも片道のみ。
 

1.は早速見つかったので、これで完結。2.は「このマンガを読め!2017」1位の作品。このときの3位が「金の国 水の国」だったようだ。3.はまだ1巻も読んでないけど、テロやカルトの知識吸収に。
 

レンタル落ち品のワゴンセールやってたので物色。1.はG・K・チャスタトン原作でイングマール・ベルイマン監督・脚本の映画。この組み合わせ強烈すぎる。2.はもうネタを観ることは少ないし、Best Liveってことなので。3.は結構好きなコメディ映画。BRだったし、なんか懐かしくて。
 

お盆の20%OFFセールの際には¥7,500だった5.が8/17から30%OFFになってて、しかもこの土日は10%OFFセール。¥5,000以下になったら買おうと思ってた条件をクリアしちゃったので、早速購入。
1.は時代ミステリ。2.は百円棚に出たら買い。3.も同様。4.はこれで完結。
 

1.はSF短編集のようなので。2.は著者の19年振りの短編集なんだとか。
 

茶箱広重

 
収録作品は「茶箱広重」「縦走路」「黒まんとの死」「俺が愛した女」
「陽炎街」「ほっぺたの時間」「水茎」の7作品。
 
一ノ関圭に関しては、昨日書いた通り。
作品一つ一つの密度からいって、寡作なのはむべなるかな。
一つの短編に込められた人間ドラマがずっしりと重い。
 
でも、そのまま絶筆されてるのが、非常に残念。
あと「鼻紙写楽」を買えば、ほぼ完了なんだものな。寂しい限り。
 
やはりベストは本書の約半分ほどを占める表題作で決まり。
わずかの資料をもとに、ほぼ想像で作られた作品なんだろうが、
半端無い説得力をもって、重厚な人間ドラマが活写されている。
 
第二位は「俺が愛した女」で。
この短さの中に一本の映画以上の人間ドラマが凝縮されている。
 
第三位はやはり史実をベースにした「水茎」を選びたいところでもあるし、
ミステリ的な展開で読ませる「縦走路」を選びたいところでもあるが、
一ノ関圭全作品の中でも一番のタイトルと思う「ほっぺたの時間」にしてみよう。