新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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きみがぼくを見つけた日

今度は映画版。TSUTAYAの半額キャンペーンにて鑑賞。

きみがぼくを見つけた日 [DVD]

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膨大な積み重ねで描いていた原作なので、さすがにその味は出せないよね。
二人の関係だけに絞って、とにかく『無難に』まとめあげた作品だな。ヘンリーの危うい部分だとか、セックスの要素だとかも(原作はもっと包み隠さず大胆)、ばっさり割愛。カップル向けのロマンチックな小品仕立て。
ただ脚の部分の処理は映画版の方が良い。原作もここまでするなら、これが直接的にヘンリーの死に関わるような必然性に繋げて欲しかったな(と考えるのは、ミステリの合理性に毒されてるせい?)。
 
特筆すべきは結末の描き方。原作と変えているどころか、ある意味では真反対とも受け取ることが出来よう。しかも、それをわざわざ台詞にして盛り込んでいるという念の入れよう。原作批判か?
でも、たしかにこれも有りは有りだと思うし、原作も映画版もどっちも同性である男として”ずるい”とも思ってしまったのだが、ただやはり感動の幅が違うのは間違いあるまい。
この映画版の結末では、あまりにも『無難に』過ぎて、観客に気持の高まりを与えるには弱いよなぁと。
 
そんなわけなので、興味ある方は是非とも原作をお読みください。