新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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妖鬼妃伝 美内すずえセレクション 黒の書

 
少女漫画の一つの潮流でもあるオカルト系ホラー漫画。
(最近の事情は知らないから、「あった」と過去形にした方がいいのかな。
 でも、それ系統と思えるような少女漫画誌はまだ複数生き残ってそうな……)
 
腐るほどあって、どれもこれもステレオタイプな感じがして、
この手の作品や作家には触手が伸びないというのが正直なところだ。
 
高階良子わたなべまさこなんかは、まさしくそれ専門作家と思えるし、
それぞれ「ガラスの仮面」や「スケバン刑事」という別系統の代表作を持つ、
美内すずえ和田慎二もその代表的な作家の一人に数えることも出来るだろう。
 
本書は美内すずえのそれ系の代表作である二作品「妖鬼妃伝」「黒百合の系図」に
おまけの幻作品「ひばり鳴く朝」を収録したもの。
 
こんな泥沼分野でも、さすがにその頂点の作家の頂点の作品ということで、
そこそこ楽しめた(それでも、凄く面白いとは言えない辺りが、この分野の限界か)。
発想自体が結構非凡なので、凡百の作品とは一線を画してるし、
プロットも凝っている。充分に読み甲斐はある作品だった。
 
また巻末の20,000字セルフ作品解説ってのが圧巻。
普段、漫画家のエッセイを読む機会はそう無いので(そういう専門作家は別として)
作品解説以外にも、執筆当時の生活なんかも知れて興味深い。
 
美内すずえ自身の中にマンガの神様がいて、そのダメ出しがきつくて、
全然オッケーが出ないせいで、進んでいないということらしいけど、
「『ガラスの仮面』もちゃんと最後まで書きます。なにしろラストは
20年前から最後の台詞や構図まで決まっていますので。」
ということなので、信じて待つしかないな。
 
このインタビューから、既に5年経ってはいるけれど……
49巻刊行から、既に10年経ってはいるけれど……