新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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密室は御手の中

 
筆名同様というか、結構な癖のある荒削りな作品だったな。
 
二つの密室トリックはなかなかの出来映え。
それぞれに複数の解法が用意されていて、その各々に見応えがある。
第1の密室の新旧トリックはシンプルだけど、解き味は爽快。
 
とはいえ、やはり見所は第2の密室だろう。
カトリックは凄いし、真相の着想も非常に素晴らしい。
 
なんだけど、解明がわかりにくくて、まだるっこしい。
なんとなくはわかった気にはなれるんだけど、
すっきり腹に飲み込めた感がしない。
 
図解入れて欲しかった気がしたよ。
金田一君みたいな漫画版で読みたい作品だった。
(実写版だとグロそうだからやだ)
 
それに誘導したいトリックとしては難解すぎるし、
ちゃんと改めされると、すぐにばれちゃうようなもんでもある。
その辺の勝手な作者都合が荒削りさを感じさせる要因の一つかも。
 
また現代ミステリの風潮を、消化不良のまま取り込んだような、
凝り過ぎの動機やら、名探偵の苦悩みたいなもんやらを、
終盤にごちゃあって詰め込んでくるのも、
なんか微妙な読後感に繋がっている。
 
トリックの着想などは大いに買うので、採点は高めの7点。
昨年度の個人的ベスト10には入り込んだな。
本格の書き手としては、一応着目しておいた方がいいかもしれない。