神薙虚無最後の事件
「本書は、2012年にメフィスト賞座談会に掲載された『朝凪水素最後の事件』、
第29回鮎川哲也賞最終候補となった同名作品をプロトタイプに全面的に改稿した作品。」
ということらしい。
ああ、いかにもメフィスト賞な作品。
メフィスト賞受賞で世に出た方が一番しっくりくるタイプの作品。
29回の鮎哲賞は「時空旅行者の砂時計」か。さすがにそれには勝てなかったな。
メフィスト賞らしさは、とにかくこの現実味の一切感じられない設定で、
人間味の全く排除された、机上のミステリでしかあり得ない作中作&多重解決という、
徹頭徹尾、本書のド頭から最終行まで、もう新本格以外の何者でもないところ。
ああ、懐かしいったら、ありゃしない(笑)
豪華作家陣達が結構微妙な言い方で(笑)帯を飾るのも、
なんかパロディ的で、ある意味笑える。
(ちなみに辻真先、麻耶雄嵩、奈須きのこ、今村昌弘、
青崎有吾、阿津川辰海、城平京、知念実希人)
この中では、阿津川辰海が表現している、「懐かしくも幸福な玩具箱」
ってのが一番しっくりくるな。
まぁ、多重推理の一つ一つ、いろんなハウダニットやら、
新本格らしいギミックの数々を、懐かしく微笑ましく愉しむべき作品。
2012年のプロトタイプの頃よりも、この時代に出たことで、
動機もほんの少しは説得力を持たせられて、結果オーライだったのかもね。
勿論、わたしゃ以前はメフィスト賞片っ端から読んじゃう派だったわけだし、
こういう作品は嫌いじゃないよってんで、採点は7点。