せつなフリック
特別すぎないくらいの、なんだかあり得そうなSF的設定を使って、
特別すぎないくらいの、きっちりと完結された物語をつむぎ出し、
特別すぎないくらいの、切なさとかのどっかの心情に響いてくる。
読後感も良く、悪くないSF短編集なんだけど、
なんか明日には忘れてしまっている、というような作品。
戸田誠二の「スキエンティア」に雰囲気が似ているかも。
ガジェットの扱い方なんかも含めて。
ただ、刺さり方があの作品ほどではないけど。
ベストは途中でわかるけども、「ピンチヒッター」かな。
また、このアイデアを波及させた書き下ろしが実に良い。
この設定だときっとこうなるよなぁと云う納得感。
第二位は表題作かな。まさかの叙述トリックだけど、
なんとなく心情を想像させる余白が良い。
第三位は「バーチャメモリー」かな。
ちょっと時間軸が矛盾してそうなとこが微妙に気持ち悪いけど。
記憶の上書きの影響みたいな、あえての設定だと飲み込んでおこう。