新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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妖女伝説 2巻(完)

 
こちらの2巻は短編集。
ローレライの歌」「カーミラの永い眠り」「月夢」「メドゥサの首」「挽歌」
日高川」「歴史は夜つくられる」「ボルジア家の毒薬」の8編が収録されている。
 
本作中の圧倒的なベストは「月夢」だろう。
八百比丘尼かぐや姫という古来のモチーフに組み合わせにとどまらず、
現代的な月着陸船とのギャップの妙に心痺れるしか無い。
……そして、そう、あのシーンだ……
文藝別冊の「星野之宣 ―デビュー45周年記念―」(感想書かずに返しちゃったな)の中でも、
星野之宣の描いた名場面として、圧倒的に得票していたあのシーンだ。
これがあることが大いに影響していると思うのだが、星野之宣作品中でも
最高傑作の一つに数えられることも多い、これまた神作だった。
 
第二位も迷わず選択できる。「ボルジア家の毒薬」だな。
独自の発想と歴史との組み合わせが秀逸、狂言回しにダ・ヴィンチという着想も良い。
 
第三位は結構悩みどころ。
これまた話の作り込みと歴史の融合、通り名を最後の一行で示す「歴史は夜つくられる」も良い。
画のインパクトでは「メドゥサの首」も捨てがたい。
ラストに意外性を見せる「ローレライの歌」「カーミラの永い眠り」も悪くない。
「挽歌」だって、唯一SF性を持っている作品だ。
そんなわけで全作品読み応えある作品ばかりなんだけど、
珍しい和テイストと、全体的な完成度を買って、今回は「日高川」としよう。