新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

本格ミステリ書評サイト「幻影の書庫」の旧管理人のブログです。カテゴリー欄の全レビュー索引より、書評、映画評、漫画評、その他評の全一覧リストを見ることが出来ます。同じくカテゴリー欄の年間順位表より各年度の新刊ミステリの個人的ランキングを確認出来ます。

獄門島

 
表題作の他「睡れる花嫁」「黒猫亭事件」を収録。
 
この「獄門島」が著者の初めての横溝作品の漫画化だったらしい。
それで気合いが入ってるせいもあるのか、これは結構見事な出来映えなのでは。
 
この長編を漫画としては長尺の192頁とはいえ、わずかとも思える長さの中で、
きっちりと表現し尽くせていると私には思えた。
大枠の構造は覚えてるとはいえ、詳細はすっかり忘却の彼方ではあったが、
これを読むことで充分に補完できたように思えた。
 
原作の雰囲気も醸し出せていると思うし、
ところどころの原作そのまま(なんだと思う)の文章も効果的だと思う。
 
日本ミステリのオールタイムベストを選ぶ企画に於いては、
ほぼ毎回1位に選出される、不朽の名作だけに、
漫画版ではなく原作を読んで欲しいとは思うが、
裾野を拡げる意味合いでは、この作品であれば価値ありかと。
 
「睡れる花嫁」はグロい作品で、横溝作品で敢えて選出するようなものでも
ないと思うが、漫画で表現したかった気持ちはわかるな。
微妙なラインで、見返せばなるほどと思えるくらいの描き方。
その分、最初から「あっ、これは」と思えたりはしたけれど。
 
「黒猫亭事件」は顔無し死体の新機軸で、横溝短編の中でも
最高傑作に挙げられることも多い作品。
これは完璧に内容忘れてたから、ここで読めて嬉しかった。