新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

本格ミステリ書評サイト「幻影の書庫」の旧管理人のブログです。カテゴリー欄の全レビュー索引より、書評、映画評、漫画評、その他評の全一覧リストを見ることが出来ます。同じくカテゴリー欄の年間順位表より各年度の新刊ミステリの個人的ランキングを確認出来ます。

Q.E.D.iff 17巻

 
「ポプラ荘の殺人ゲーム」
おお、こういう手で来たか。たしかにこのシリーズであれば、もっと早く描かれてても不思議ではなかったな。
この中盤のどんでん返しに驚かされるが、勿論それだけでは終わらない。
この手の話であれば、という着想がきっちり効いていて、なるほど納得の作品。
 
「トロッコ問題」
あれれ。作者のトロッコ問題の捉え方が、自分とは全く違う。
公正さとか共同体だとかの問題なんかでは全然なく、あくまで個人の倫理観の問題。
そもそも冒頭の一人か五人かのどちらを選ぶか、という問題では全くないもの。そんなのに葛藤は無いでしょ。
何もしなければ五人が死ぬ。積極的に、自律的に、一人だけが死ぬ方向に、分岐を切り替えられますか、という問題。
「五人を救うために、一人を殺す(というのは語弊があるが)という判断が出来ますか」という倫理的に葛藤する問題。
そのためにどちらの選択を取っても、社会的に批判されないという前提付きでの思考実験になってたはず。
更に倫理的な障壁を高めるために、デブを突き落として(これは明白に”殺し”)五人を救えるかという問題に発展するんだもの。
(ちなみに自分は分岐は切り替えられないだろうと思うし、少なくともデブは絶対に突き落としません)
まぁ真相自体もミステリ的には心地良かったけど、結局「トロッコ問題」とは何の関係も無かったよな。