新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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オクトーバー・リスト

 
いやあ、さすがディーヴァー。
凄い作品が誕生したものだ。
 
36章から始まり、章を追う毎に時間を遡っていくミステリ。
映画「メメント」のような時間逆転ストーリー。
 
解説でも触れられているが、作者お得意の章またぎのテクニックが、
こういう形式だとこんな風に発揮されるんだというのも、非常に興味深い。
通常は引きのシーン(いわば謎の提示)があって、次章で謎解き(肩すかしも多いが)
というパターンなのに、答の提示があって、次章以降で謎解きというパターン。
最初に提示されるのが謎であっても答であっても、こういう風に謎解きの快感が味わえるんだなと。
 
そして、最後の二章で、完璧に真相は解明される。
 
ひどく中途半端に思えていた冒頭の最終36章が、
完璧な最終章であったことが、一点の曇りも無く綺麗に納得できる。
 
改めて最後に示される章題と、章ごとの写真を見返してもまた、
ニヤニヤできてしまった。
 
とにかく見事な作品。本年度No.1だろう。
 
採点は悩まず8点。
 
また敢闘賞ものなのは阿津川辰海の解説(というか日本語版序文)。
まさにこうあるべし、な完璧な発想と出来映え。本年度のベスト解説間違いなしだな。
 
さて、これでようやく海外物も読めたし、今年も既に半分終わってしまったので、
明日2021年の年間順位表をアップすることにしよう。