新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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藤子不二雄Aブラックユーモア短篇集 1

 
「奇妙なものへの憧れ」と題された作者のあとがきが、
藤子不二雄Aの誕生のルーツを語っていて、非常に興味深い。
 
早川書房の「異色作家短編集」がそもそもの始まりだったというのが、
なるほどと思わせてくれる。
 
ただ、あのシリーズは単に”奇妙な味”という味わいだけではなく、
もっと違う世界に連れて行ってくれたり、アッと言わせてくれたり、
自分の想像力の及ばないその先を見せてくれるのが魅力だったと思う。
 
A氏の場合は、日常の中からホラーやブラックユーモアを具体化させていく作風で、
結末もそのまんまのものが多く、想像力の先にまで連れてってくれないんだよなぁ。
 
そういうわけで、本書の中でもいいなと思えたのは、
発想自体の奇妙な味だけ(と言い切ってしまうのは失礼だけど)が魅力的な
「ひっとらぁ伯父さん」と「マグリットの石」の二作品くらいだったな。