クスノキの番人
『秘密』『時生』『ナミヤ雑貨店の奇蹟』に続く新たなエンターテインメント作品。
……ってのが売り文句。
つまりは、SF的(というよりファンタジー的と言った方がいいのか)着想を
とっかかりに描いた、叙情的な人情物(兼家族物)、という括りになるかと思う。
これまでの三作には及ばないなぁってのが、正直なところ。
SF的着想は最初は全貌は伏せられてるんだけど、謎解きの興趣があるかというと、
全然そんなことはなくて、結局そのまんまで拍子抜けするほど。
先ほど括弧内に書いたように、これら一連の作品はまるで共通テーマであるかのように、
「家族物」という側面を持ってるんだけど、その点でも本作が一番弱い。
なにせ軸となるはずの主人公の家族関係が、これまで接点が無かった伯母と甥という関係に過ぎないから。
そこが弱すぎるだけに、亡き社長とドラ息子、ヒロイン親娘がドラマとして配置されてるんだけど、
かすかなミステリ風味として、それぞれの課題を解決するという展開で、感傷は弱め。
まぁとある親子関係で、泣かせるラストがあることはあるんだけども。
ほぼミステリとしては対象外に近いとは思うが、SRの会としては
対象作品に入っていたと思うから、採点は6点。