新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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砂漠を走る船の道 ミステリーズ!新人賞受賞作品集

SF研のY氏のブログを見て、こんなお手軽な作品集があったのかと知ったもの。
ミステリーズ!新人賞受賞作という、優秀さが自ずと証明されてるような
作品ばかりをまとめて読めるなんて、こんなお得なことは無いぞ。
続巻もあるみたいだけど、町田の図書館には置いてないな。
 
まぁ、表題作はさすがの別格としても、他の作品もそれぞれに愉しめた。
五作品しかないから、自分で順位付けして、短評書いてみよう。
 
1位:梓崎優「砂漠を走る船の道」
初読時の感想を再掲。「限定状況の中でのフーダニットのロジック。衝撃極まるホワイダニット
巧妙なミスリードが惑わす仕掛けの驚愕。外枠(舞台の特異性を活かし切る物語)に装飾
(過度ではない華麗さも秘めた落ち着いた読みやすい文体)も完璧で、もう全く申し分ない。」
 
2位:沢村浩輔「夜の床屋」
独特な雰囲気を持つ、ホワットダニットの秀作。
青木知己氏の「Y駅発深夜バス」を思い出す。こんな作風の作品をもっと読みたいなぁ。
 
3位:高井忍「漂流巌流島」
巌流島の定説がいかにいい加減だったかを示す前半の様々な文献提示も面白いが、
更にそれらを全部盛り込んで、本格ミステリとして筋を通すなんて、絶品。

4位:秋梨惟喬「殺三狼」
本格ミステリとしては、非常にワンポイントなアイデアなんだけど、
こんな面白いストーリーに仕立て上げたのが成功の所以。興味をつなぐ最後の一文も良い。
 
5位:滝田務雄「田舎の刑事の趣味とお仕事」
他の四作品に比較すると、本格としても、物語としても小粒すぎたな。
 
受賞作ばかりの高品質。これだけの平均値で短編集を読めることなど極めて稀。
採点は8点付けても全くかまわないだろう。