新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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さよならアリアドネ

さよならアリアドネ (ハヤカワ文庫JA)

さよならアリアドネ (ハヤカワ文庫JA)

 
時間ループ物で、テーマは夫婦物。
 
モロに自分がはまりそうな体裁の作品だったんだけど、
意外にそうはならなかった。
 
時間ループ物って、あがいて、もがいて、の紆余曲折の過程があって、
だからこその最後のハッピーエンドに、共感できて、心が晴れる。
「恋はデジャ・ブ」系統の時間ループ物は、そういうのが基本形だと思う。
 
自分がこの立場に追い込まれたら、まずは何がなくとも現状の把握。
(どうせリセットされるんだから、どんな強引な手段を取っても構わない)
そこから課題を特定して、それを解決するための目標の設定と作戦の立案。
そんな風に進めるはず。
 
ところが主人公はぜんっぜんっ、そんなことはしようもしない。
ただただ単にのんべんだらりと日々を送るだけ。
ほんのわずかのバリエーションは取ってはいるけれど。
 
それでいて最後の一日だけ、これまでやらなかったことをバンバンやって、
その全てが何一つの例外も無く上手くいって、それでハッピーエンドって、
そんな作者のご都合主義的な手管では、共感も感動も味わえるはずがないってば。
 
後半もどうでもいいいような成り行きから、これまた何をやりたいのか
明確じゃない展開で、あまり興味をそそられなかった。
もっとがっつりと前半と絡んでくれれば、面白みもあったんだろうけど。
ラストで無理矢理思わせぶりな揺さぶりを入れてきたけど、
もしかしたらと思えるくらい信憑性の感じられるものではなかった。
 
残念ながら、時間ループ物はこういうんじゃないってば、な作品だったな。