逆ソクラテス
珍しく真っ白な伊坂。
学生時代(主に小学生時代)を回顧する作品という
テーマが統一されているだけに、童心が失われることなく、
全編読後感がとても良い作品に仕上がっている。
この作品集に関してだけは、異世界ファンタジー感は一切無いな。
ちょっとおとぎ話的に夢が叶ったりはしてるけれど、
異世界ではなく、あくまでも現実とは地続きで繋がってるから。
なので、デビュー20周年を記念した伊坂の集大成って感じは全然しなくて、
上澄みの透き通ったとこだけを掬ったような作品だけど、
たまにはこんな真っ白伊坂もいいじゃないかってとこかな。
ベストはやはり表題作だろうな。
ちょっと苦みを残すところはあるが、爽快感は格別。
先入観の支配を断つ魔法の言葉は、人生の一つの指針になり得るかもしれない。
空気を読むことが何よりも重要視される時代だからこそ、逆に必要とされるかも。
次点も「スロウではない」になっちゃうかなぁ。
最近の書き下ろし3作品よりも、古い作品を良しとすることにはなるが。
ハウダニット系ミステリと強弁できなくもないが、
まぁ普通に考えて採点対象外だろう。