新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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佐武と市捕物控 野ざらし

 
石ノ森章太郎の最高傑作に挙げる人も多い人気作品。
 
ただ、時代物と本格ミステリとは親和性が良くないと思っている自分にとっては、
そんなに思い入れを見いだせない作品。
 
必ず犯罪が描かれていてミステリ的ではあるものの、
そういうものに自分が勝手に望んでしまうものとは、
全く別の価値観で描かれている作品だろうから。
 
アプローチが全く違うのに、最終の形が近すぎる故に、
時代ミステリって奴に、かえって遠さを感じてるように自己分析してしまう。
(勿論あくまでミステリを志して書かれた例外の時代ミステリも数多くあるけど)

その時代ならではの風物だったり、空気感だったり、
そういう中でも、いつの世も変わらない人間の業といったもの、
そういったものを漫画家ならではの”画”の持つ力で、
描き出そうと試み続けられた作品なのではないだろうか。
 
ベストは冒頭の画の力強さに加えて、何段階かの驚きを
演出してくれた「北風は黒馬の嘶き」。
決闘の展開で魅せる「氷の罠」と、艶っぽい「行水」でベスト3。