三体Ⅱ 黒暗森林
前作の感想にも書いたが、一作目の本質は”奇想SF”だった。
そして本作は、紛れもなく”謀略SFミステリ”と表現できるだろう。
11次元の陽子を改造した、原子よりも小さいスーパーコンピュータである智子
(どうしても日本人は「ともこ」と読んじゃうけど、「ソフォン」ね)により、
人類のあらゆる活動が監視され、理論物理学の発展も阻止されている。
(わずかの歪みも許されない実験に干渉して台無しにしちゃう、迷惑な智子ちゃん)
そこで立てられた計画が、面壁計画。
思考が言語同様に共有される三体人と違って、地球人の脳内の思考だけは
智子でも読み取ることは出来ない。
そこで選び出された四人の面壁者が、地球上の全てのリソースを使用して、
だけど自分の脳内だけで、圧倒的に文明力に差がある三体艦隊に対抗し得る
作戦を立てていく、というのが大筋。
この四人四様の謀略が凄い(比較的根本の着想が似通ってはいるけど)。
これがそれぞれ解き明かされていく読み味は、まさしく謀略ミステリ。
それがとんでもない宇宙スケールで展開されるので、謀略SFミステリ。
フェルミのパラドックス*1に説明を付け得る、タイトルが示す理論が
ラストにはずしりと響く。
(本質的に甘ちゃんな自分としては受け容れたくない悲しい理論だけど)
いやあ、堪能した。
前作がバカSFで、こちらはバカミス。
奇想の種類が豊富な分、一作目の方が好きだけど、本作も紛う事なき傑作。
この二作目できっちりと完結はしてるので、いったい三部作の最終作は
まずどういう展開からやってくるのか、そこからもう興味津々。
当然読む。
そして当然、次回もぶっ飛ぶんだろうなぁ。間違いないな。