- 作者:平石貴樹
- 発売日: 2019/10/22
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
寡作の頃にはよく読んでたんだけどなぁ。
中でも「誰もがポオを愛していた」は日本ミステリ30選にも入れてたくらい。
クイーンばりのロジックの書き手として、評価していた作者だった。
ただ松谷警部シリーズとして急に量産されるようになってからは、
気にはなっていたものの、残念ながら一冊も読めていなかった。
Wikipedia見てみたら、東大の教授を定年退任されたので、
量産が出来るようになったのだな。なるほど~。
というわけで、ホントに久しぶりの平石作品。自分としては実に18年振りだ。
期待してたほどのロジックの歓喜を覚えることは出来なかったけど、
伏線もそれなりにしっかりと張ってあって、非常に堅実な謎解き。
この辺はさすがだなぁといったところか。
一方、自分の評価対象外ではあるけれど、
小説としては(謎解きの前までは)ちっとも面白くない。
獄門島の本歌取りとしても、モチーフを同じくしても、
偉大すぎる本家にはとても及びようがなく、成功とは言いがたい。
釣り鐘のトリックをこんな風にオマージュしたのか、と驚いた点はあったけど。
そこも含めて、最後の動機の解明に賭けていたってところかもしれないけど。
ここは本当に圧巻だった。そこまでの謎解きの堅実さを吹っ飛ばすほどの豪快さ。
地味な題名も最後には沁みてくるし。
これがあるから、採点はギリ8点としよう。