新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

本格ミステリ書評サイト「幻影の書庫」の旧管理人のブログです。カテゴリー欄の全レビュー索引より、書評、映画評、漫画評、その他評の全一覧リストを見ることが出来ます。同じくカテゴリー欄の年間順位表より各年度の新刊ミステリの個人的ランキングを確認出来ます。

赤い部屋異聞

赤い部屋異聞

赤い部屋異聞

 
縛りとしては比較的ゆるめのオマージュ短編集。
 
趣向の統一があるわけでもなく、元ネタも多種多彩で、
なんとなくテーマ感をもって集めた短編集という趣かも。
 
それだけに、各作品毎に「細断されたあとがき」として、
短編読み終えたら即、その元ネタや著者の意図した趣向などが、
自己解説されていくのは、本書を味わうにはたしかにベストの形式。
しかもこれ自体もオマージュになってるってのも素敵。
 
個人的にはやはり元ネタの素材を使って、同工異曲的な作品を
作り上げるタイプのオマージュ作品よりも、
のりりん本来の評論家気質が発揮される、元ネタに新たな解釈を
見出そうとしている作品の方に心惹かれる。
 
その意味でベストは「葬式がえり」。
ありがちな幽霊話である怪異譚に、意表を突き、
なおかつ筋の通ったミステリ的解釈を与えてくるところが圧巻。
第二位は表題作。
ただでさえ完成度の高い元ネタを踏まえて、それを突き抜けた先に、
新しい解釈を付け加えようとするなんて、とても意欲的な作品。
第三位は「最後の一撃」。
オチが見え見えになってしまう作品集の中にあるよりも、
こうして単独で切り出した方が断然映える作品だった。
 
採点は7点だな。