新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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雪が白いとき、かつそのときに限り

雪が白いとき、かつそのときに限り (ハヤカワ・ミステリ)

雪が白いとき、かつそのときに限り (ハヤカワ・ミステリ)

 
新本格や日本文化に色濃く影響された作品。
 
前作同様、百合な雰囲気を醸し出しているところも、その現れ。
二つの事件それぞれにおいて、ディスカッションを繰り返しながら、
幾つもの仮説を積み重ねては崩していくのも、新本格の雰囲気。
 
雪密室という不可能状況を扱いながらも、ハウダニットが主軸ではなく、
犯人を絞り込むロジックがホワイダニットから導かれるのも現代的な手筋。
それも目に見えている状況や手がかりからではなくて、
「本来ならあってしかるべきものが無い」という、
無いものに着目したロジックが、非凡なセンスを見せてくれている。
 
最後の真犯人を指し示すロジックは細かすぎてわかりにくい気はしたが、
これもホワイダニットから導かれてるので、ポイントはゲットしてる。
 
動機という意味合いでのホワイダニットは賛否両論あると思うが。
 
奇しくも今年の私の海外ベストは、雪密室対決になってしまったぞ。
結構、微妙な軍配だけど、雪密室にちゃんとハウダニットの解決を用意してくれた
(そういう評価してしまう私の感覚が古いんだろうけど)アルテの勝ちにしちゃおう。
本作も勿論、年間ベストを争う8点。