新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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シーソーモンスター

シーソーモンスター (単行本)

シーソーモンスター (単行本)

 
海族と山族という二つの一族の裏歴史的な対立という設定を使って、
8人の作家が別々の時代を描いて、全体でタペストリー状に浮かび上がらせるという
「螺旋プロジェクト」ってのの一冊のようだ。
 
一冊ではとても全体を知りようはないので、本書としては
運命的に反発し合う一組と、ちょっと冷めたような審判役とが各作品にいる、
という程度の緩い意味合いでしかなさそうだ。
(審判役ってのはいかにも井坂的な匂いなので、多分独自設定なんだろうけど)
 
昭和と平成をまたぐバブルはじける少し前の「シーソーモンスター」と、
デジタルのログを嫌ってアナログのやりとりが見直されている、
ちょい近未来を描いた「スピンモンスター」の二編が収録されている。
 
特殊な職業の人物が紛れ込んでる日常が非日常に変わっていったり、
一見平凡な人物が日常から非日常へと巻き込まれていったりする、
という、ある意味、伊坂幸太郎としては定型的な二作品。
 
でもって作品的にも、なんかその定型の範囲に収まってるような、
とんがりのない作品のように思えてしまった。
 
面白いことは面白いんだけど、井坂作品としては普通な印象。
 
ミステリではないので(冒険小説系には含まれるとは思うけど)、
採点対象外。