- 作者: 新井素子編
- 出版社/メーカー: キノブックス
- 発売日: 2019/02/02
- メディア: 単行本
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新井素子が3年をかけて、女性作家だけのショートショート集を編んだ作品。
まえがきで延々と言い訳が綴られてるとおり、
ショートショートというイメージに合致した作品というのは少ない。
上限50枚程度を目安にした掌編集というだけのものと捉えた方がいいだろう。
でも、だからといって、つまらないわけでは決してない。
このタイトルはよく付けたもので、たしかに色とりどりではあるのだけど、
粒は揃っていて、しょっぱさやほろ苦さや何とも言えない不思議な味や、
味付けは少しずつ違ってはいるんだけど、でも、それぞれにどこか甘い。
ああ、選者が新井素子だって、なんとなくわかる気がする。
女性作家特有のイヤらしさ、ドロドロとしたところなんかは、本書には一切無い。
起承転結が優れてる(特に「結」の部分ね)特出作品は無いので、
自ずと全体的な雰囲気に心惹かれる作品を上位に選びたくなるかな。
というわけで印象批評的な選出にはなるのだけど、
ベストは 三浦しをん「冬の一等星」かなぁ。
描き方と描かれる状況が好き、としか言い様がないけど。
第2位は萩尾望都「子供の時間」で。
隔離環境でAIに育てられた少女との出逢いを描く"理"の部分があってこその
"理"では表現できないラストが心に響く。漫画家の感性なんだなと感じる。
第3位は図子慧「ダウンサイジング」で。
認知症の感覚に対する、非常に現代的な表現。その斬新さが素晴らしい。
次点は本書中では最もショートショートらしい 恩田陸「冷凍みかん」で。