新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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金時計

金時計 (名探偵オーウェン・バーンズ)

金時計 (名探偵オーウェン・バーンズ)

 
なんと本書はアルテの五年ぶりの新作なんだそうだ。
同時代的とはとても思えないクラシカルな作風だけど、書かれたばかりの作品。
しかも日本先行発売で、本国よりも先に読めちゃうなんて。
今まで聞いたこともなかった出版社なのに、なぜにこんなことまで出来ちゃうのか。
 
それに今までのアルテとは、ひと味違う作品だぞ。
ファンタジー要素をモチーフだけではなく、作品自体に組み込んでくるだなんて。
 
本書は二つの時代を交互に描く。1911年と1991年。
こういう場合、例外は皆無と云ってもいいほど、
名探偵は「現在」パートにいて、「過去」の事件の因縁が絡んでくるものだが、
本書の探偵であるオーウェン・バーンズがいるのは1911年。
 
しかもその二つのパートで描かれる話には全く共通性が感じられない。
幾つかの共通のモチーフが現れてはくるのだけど。
 
それが本当の意味でどう呼応するのか、結末に至るまで読者は途方に暮れたままかも。
自分はそうだった。
両方のパート(特に現在編)の行き着く先も、おそらく読者の予想を超える。
 
そして、そして、最後に明かされる雪の足跡トリック。
ほぼほぼ手を加えようもないような状況にもかかわらず、
まさかこんな詭計が成立していようとは。
 
怪作にして快作。こんな現代作品が読めるなんて、なんと快哉
 
採点は悩まずの8点。本年度の海外物ベストはこれで決まりかなぁ。