- 作者: 柄刀一
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2019/05/23
- メディア: 単行本
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柄刀一らしい”かたさ”が存分に感じられた作品だった。
まずは”硬い”。
久しぶりに(てか、書評リスト眺めてみたら、10年近く振りって感じなのか)
この作者の作品を読んだんだけど、懐かしさを感じるくらいに文章が硬い。
読んでてちっとも面白くない、という読中感は未だに健在だったよ。
それでも”固い”。
そうはいっても、ミステリとして緩みが無いのは、やはりこの作者の強み。
本書なんかは国名シリーズへのオマージュなんだけど、
タイトルのモチーフの活かし方は、本家以上と云ってもいいだろう。
こだわるとにはとことんこだわる、本格の書き手としての頑固さが非常に良く見てとれる。
そんなわけで、やっぱり最後は”堅い”。
とにかく手堅いのだ。
ミステリとしての出来映えは、ほぼ常にある程度以上をキープしている。
ローマ帽子の一度も登場しない人物を犯人として指摘する外連味。
フランス白粉の意外な犯人と、それを指摘する心理試験的ロジック。
オランダ靴のトリックと後期クイーン的問題をも想起させる逆転の構図。
エジプト十字架のホワイが導き出す必然性。
いずれも読み応えのあるものばかり。
というわけで、読み物として面白くなくても、採点はやはり7点。
ベストはなんとなく逆説的論理に感じられる「フランス白粉」とも迷ったけど、
あのエジプト十字架に必然性を与えるなんてと唸らされた表題作かなぁ。
当然残り五作もありだよね。柄刀版チャイナ橙とかギリシャ棺とか楽しみだな。