新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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大崎梢リクエスト!本屋さんのアンソロジー

大崎梢リクエスト!  本屋さんのアンソロジー

大崎梢リクエスト! 本屋さんのアンソロジー

 
昨日の宮内悠介のもので、こういうアンソロジーが出てるのを初めて知って、
実は以前にも数冊出てることがわかって、その中からならこのテーマだなと選んだ作品。
ちなみに他には近藤史恵の「ペット」に、坂木司の「和菓子」ってのがある。
一番新しいとこでは、 博奕と並んで刊行された森見登美彦の「美女と竹林」。
美女はともかく、竹林って(笑)とは思ったけど、そちらも図書館予約してみた。
竹林縛りはみんな困ったんじゃないかしら、まぁ美女だけじゃ広すぎて弱いけども。
かぐや姫がいっぱい出てこないことを祈るしかないか。
 
おっと、話が脱線しすぎたが、本屋テーマは予想を大きく裏切るくらいに良かった。
 
全ての作品が例外なく、気持ちの良くなる素敵な話ばかり。
飛び抜けた作品は無い代わりに、どれもこれも吃驚するくらい愛しくさせてくれる。
これだけ粒ぞろいのアンソロジーは珍しいと思えるほど。
 
ただ、ひょっとしたらこれって、”本屋”って存在自体が、
既に一種のノスタルジーを喚起させるものになってるってことなのかもしれない。
それが心の中の柔らかいどこかに触れたり、刺激したりしてたように感じられた。
 
ただ、全ての本好きに薦められる、良質なアンソロジーで間違いなし。
採点は非ミステリが多数を占めていても、8点としたい。
 
全作品が良いと思える中で、ベスト3を選ぶのも嬉しい反面申し訳ない気もするが、当然やる。
 
全部ホントに僅差なんだけど、ベストは似鳥鶏「7冊で海を越えられる」にしよう。
暗号の謎解きだけかと思ってたら、伏線も納得の意想外のフーダニットまで披露してくれた。
 
第二位は宮下奈都「なつかしいひと」だな。
まさか本書で泣かされるとは思ってなかった。わかってる、わかってるんだけど、潤むのが止まらない。
 
第三位は有栖川有栖「本と謎の日々」。
惜しみなくネタを注ぎ込んで、精度の高い謎解きを繰り返し披露してくれるなんて。
通常のアンソロジーだったら、迷い無くベストに選んじゃうんじゃないかってくらいの出来映え。
 
坂木司国会図書館のボルト」の痛快さ、飛鳥井千砂「 空の上、空の下」の爽快感もベスト級。
吉野万理子「ロバのサイン会」のほのぼのさも捨てがたい。
他の三作もなるほど感を与えてくれたり、チクリとした痛みを伴っていたり、
とにかく心地よい読書体験だった。