新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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宮内悠介リクエスト!博奕のアンソロジー

宮内悠介リクエスト! 博奕のアンソロジー

宮内悠介リクエスト! 博奕のアンソロジー

 
テーマが「博奕」だし、冒頭が久々の梓崎優なので、読まずにはいられない。
 
しかしながら、このテーマから自分が想像(&期待)してたような、
ギャンブル漫画的な仕掛けや駆け引きを楽しむ作品はほぼ皆無だった。
 
人生や大きな選択を博奕に託すというような作品が多かった。
また、そんな選択が託された博奕だからこそかえって、
結果はあえて描かないという手法を取っている作品も多かった。
「たしかに、やりがち」と、ふむふむと頷けてしまったけどね(笑)
 
そんななんで、思ってたほどの満足感は得られなかった。採点は6点。
 
ベストは、この書き手にしては、ホワイの妙味や衝撃は無かったけど、
一応、梓崎優「獅子の町の夜」で。
博奕を一気に無効化するような真相の提示が行われるという意味合いで。
 
二位、三位は、作品的には短編歴史小説として完成度の高い二作品
山田正紀「開城賭博」、冲方丁「死争の譜 ~天保の内訌~」
で決まりだとも思うんだけど、本書中一番興奮出来て面白かった冲方作品だけど、
博奕というテーマアンソロジーとしては違う気がするので、山田作品のみを選択。
 
規定違反失格を受けての繰り上がり3位としては、
法月綸太郎「負けた馬がみな貰う」も考えたけど、踏み込みが足りないかなぁと。
もう少し膨らませて、ここからの転結のある中編くらいで読ませて欲しかったなぁと。
 
そんなこんなで最後差したのが、本書随一のダークホース、日高トモキチ「レオノーラの卵」。
不条理漫画を小説化したような、不思議な作風は読者を選ぶだろうが、
一応博奕自体の外連味もあって、印象に残った一編だった。