新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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ネクスト・ギグ

ネクスト・ギグ (ミステリ・フロンティア)

ネクスト・ギグ (ミステリ・フロンティア)

「ロックとは何か?」という問いが、全編を通じて縦筋として通っていて、
それがしっかりとミステリと結びついているという、結構珍しいタイプの作品。
 
ヴァン・ダインの「カナリヤ殺人事件」での有名なポーカー・ゲームのように、
一緒にロックを演奏することが犯人絞り込みの根拠になるという、
滅多にお目にかかれない手法さえ使ってくる始末だ。
 
それらが単に奇をてらってたり、色物勝負ってわけじゃなくて、
意外に本格ミステリとしてちゃんとしているのは高評価ポイント。
 
ただ、絵空事の人工的本格ミステリ世界ではなくて、
現実世界にしっかりとベースを置いてる作品なのに、
警察の捜査があまりにもないがしろにされてるのは気になった。
一度も事情聴取されてないなんて絶対あり得ないのに、そういう風にしか捉えられない。
「事情聴取疲れたね」ぐらいの描写をちょいと入れといてくれるだけでもいいのに。
 
ただまぁ現実的に言えば、主要人物全員長時間の取り調べでヘロヘロになってて、
犯人は二日とかからずゲロしてて、第二の事件なんか起こってなかったと思うけどね。
このミステリ作品上では最後まで伏せられてて、最重要ポイントだとさえ思えるのに、
こんな動機なんかすぐばれてるに決まってるやん。
 
それでも本格ミステリとしての手筋は整ってると思うので、採点は7点。