- 作者: 陳 浩基
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2017/09/30
- メディア: 単行本
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個人的にはさほど社会派な要素が素晴らしいとは思えなかったが、
とにかく本格としての出来映えが凄い。
一編一編の構図の描き方が頭抜けている。
特にやはり一作目の「黒と白のあいだの真実」が傑出。
どんな中短編ミステリ・コンテストでも、優勝するだろうと思える作品。
とてもこんなところまでは読めやしない、深謀遠慮・権謀術策の極みとも思える
「任侠のジレンマ」を経て、次の「クワンのいちばん長い日」がまたもや傑作。
急転直下の解決が、怒濤のような驚くべき構図の連鎖を暴き出す。
これには引けを取るが「テミスの天秤」も凄まじいまでの意外な構図。
最後の二作はそれまでに比べると意外性の薄い構図ではあるが、
最終作の最後の一文の締めくくり方だけは、なんとも見事すぎる。
これで更に作品としての魅力が格段に向上している。
同時代として読んだ現代海外ミステリとしては、ベスト10に入るだろう作品。
(そう思ってしまうと、ランキング大好き人間としては早速選びたくなってしまったので、
その結果は次のブログ更新時にでも)
そういう意味でベスト10入りを考慮する作品として9点を付けてもいいかもしれないが、
最後の二作品がそれまでのワクワク感を若干阻害した点があったので
(締めくくりは別だけど)、採点はギリギリ9点を逃す8点としよう。