屍人荘の殺人

屍人荘の殺人

鮎川哲也賞受賞のデビュー作にて、本ミス、このミス、文春の三冠を達成した作品。
三冠は過去には「容疑者Ｘの献身」しか取っていないというから、これは快挙だ。
　
それも納得のリーダビリティ。
小説が上手いというよりも、とにかくこの着想が良かった。
クローズドサークルの新機軸。不慮の事態で閉じ込められるにもかかわらず、
このジャンルって意外に緊迫感が無いものが多かったりする。
そんな中でのこのアイデアは、とにかく秀逸。
緊迫感・サスペンス要素を盛り上げてくれるだけでなく、
人間関係の描き方にも一工夫できたり、搦めてのトリックの幅が出来たり、
一石数鳥のメリットだらけの美味しい着想。
　
これで勝ってるだけでなく、ミステリとしても巧みに構築されてる。
それぞれにこの状況ならではのトリックが使われてるわけだし。
この特異な着想だけに終わらず、ミステリとしての成立性も
綺麗に仕上がってる故の高評価であることは間違いあるまい。
　
採点はもちろん年間ベスト級の８点。
　
まだ感想を書いてない作品も含めて、年間順位表も更新しておく。