新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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ハーモニー

ハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

ハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)

「虐殺器官」も凄い作品だったけど、これも素晴らしい。
もっともっと名作読めたはずだったろうにな。惜しいことだ。
 
以下、前作の感想とほぼほぼ被ってたりするんだけど、
完璧なほど全くタイプの違う作品なのに、不思議なことだ。
私の感じる伊藤計劃色ということになるのかもしれないけれど。
  
前作同様、思弁的・哲学的とすら思えるのに、わかりやすい
エンタテインメントにもなっている、その両立性に驚かされる。
 
また、とてつもなく筋の通った世界観の構築。
ファンタジーと思えるくらい非現実的なのに、これほどリアルさを
感じられるのは、そこの筋が綺麗に通っているからだと思う。
 
そして本作もまたホワイダニット・ミステリでもある。
サスペンスとしての展開の中、とてつもない方向に
世界を持って行かれてしまう。
 
そして訪れる、このエンディング。
これを究極のハッピー・エンドと捉えるか、
究極のバッド・エンディングと捉えるか、悩ましいところだろう。
 
多少ネタバレになってしまうので、未読の人には申しわけないが、
本書の記述形式の意味がわかったときの衝撃は強かった。
 
これは名作ミステリの意外性にも匹敵しえるもの。
しかも叙述ミステリの傑作とも言い得るもの。
やはり本作も迷わず8点だな。