新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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ポーの一族 春の夢

この作品の続きが書かれるなんて、想像すらしたことがなかった。
まさかの40年振りの新作。
 
結局全く思い出せなかったため、「ポーの一族」全五巻も読み返してしまった。
そうか、40年振りってことは、最終話はリアルタイムの話として書かれてたんだね。
当時の読者はエドガーやアランと同時代を生きてたんだ。
 
というわけで40年振りの新作だが、舞台は2017年ではなかった。
まぁ元々時間軸は様々に行ったり来たりして描かれてる作品群だからね。
 
だから本編ラストからの続きというわけではなく、
1944年、第二次世界大戦中のドイツが舞台。
アランと二人きりの時代。
 
読めたことは嬉しくは思えるし、作品自体も素晴らしい出来だとは
思えるけど、でも不安に思うことも。
 
個人的には「ポーの村」がシステム化されて描かれているのが、
すごく散文的で残念に思えたのが一つ。
住民が眠ってばかりという設定も、以前とは繋がりにくい。
 
もう一つは、今回非常に特殊な能力も発動するのだけど、
時間軸の途中に挿入するにしては、ふさわしくないと思えたこと。
 
なんか連続性が怪しくならないといいんだけどなぁ。
 
ところで原作を読み返して気になったのが、
最終話に登場した顔に傷のある男。
アーサー・クエントン卿だと思われるのだけど、
唐突で説明も無く、非常に謎のまま。
 
もしもこの先アランのいなくなった後の物語も描かれるのなら、
この決着は付けて欲しいところだ。