新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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伊藤典夫翻訳SF傑作選 ボロゴーヴはミムジイ

伊藤典夫翻訳SF傑作選 ボロゴーヴはミムジイ (ハヤカワ文庫SF)

伊藤典夫翻訳SF傑作選 ボロゴーヴはミムジイ (ハヤカワ文庫SF)

驚くくらい、どの作品も傑作。
これだけ粒ぞろいのアンソロジーも珍しい。
既読作は「ここがウィネトカなら、きみはジュディ」ににも選ばれてた「旅人の憩い」だけなので、
既存のアンソロジー等とはそう重複しないようなセレクトだと思うんだけどね。
それでこれだけの質ということは、元々の伊藤典夫の眼力を証明してることになるんだろうな。
 
時間・次元テーマってのも、自分に合ってたのかもしれないけど。
でも、続巻は出るみたいだし、テーマにかかわらず是非読んでみたい。
(図書館で、というのが申し訳ないけど)
 
ベストはほぼほぼ同率で、
「子どもの部屋」レイモンド・F・ジョーンズ
「虚影の街」フレデリック・ポール
の二作品。
 
親の立場としてはなんとも複雑な感情を覚えてしまう前者。
特にこの結末の何とも言えない奇妙な味わい。
何も知らなかった方が、幸せでいられるのに。
 
古典の時代から繰り返されている、既視感の強い後者。
でも、やはり読書って、その作品の中に没入したり、
登場人物に感情移入してしまうものだから、ショッキングさが共有できる。
イメージが固定化されて提供される映像作品よりも、
自分の頭の中に自身で構築する読書の方が、はるかにその効果が大きい。
外ではなく自分の中だから、自分自身を反映させてしまうからってこともあるんだろうな。
 
第3位はシニカルさが光る「旅人の憩い」デイヴィッド・I・マッスンで。
 
採点は7点。いや、8点でもいいかな。満足できるアンソロジーだと思う。