新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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死の鳥

SFの短編集として、高校時代から長きに渡って
(テッド・チャン「あなたの人生の物語」に置き換えられるまで)
ずっと自分にとってのNo.1だったのが
ハーラン・エリスン世界の中心で愛を叫んだけもの」だった。
 
好きなSF作家と問われれば、
ハーラン・エリスンアイザックアシモフと答えるようにしていたくらい。
(SF研に所属してたので、こういう質問をされる機会は何度もあった)
 
この二人のやりとりや逸話も大好きだった。
 
それほどマイ・フェイバリットな作家だったにも関わらず、
しかもそれは私だけの話だけではない証拠に、数々の著名な賞も
沢山授賞しているにも関わらず、その短編集以降、
アンソロジー以外で彼の作品が読める機会が無かった。
 
国書刊行会で「愛なんてセックスの書き間違い」という刊行予告が出て、
それ以降何年も何年も待ち続けてるけど、一向に出る気配がない。
 
そんな中、ようやく刊行されたのが本書。
しかも数々の受賞歴(ヒューゴー賞ネビュラ賞ローカス賞エドガー賞
のある作品のことごとくが収録された、超お得な作品集。
 
ただ、高校時代の時のような感動までは覚えられなかったかなぁ。
半分以上既読作品だったというだけではなく、感性の変化なのかも。
 
ベスト・オブ・ベストな一作は表題作でもある「死の鳥」。
高校時代にも一番影響を受けて作品だったしなぁ。
第二位は「ランゲルハンス島沖を漂流中」
第三位は「おれには口がない、それでもおれは叫ぶ」
 
やはり、この三作に代表されるように、
壮大な着想を、非常に特異な語り口で、一作の短編として完成させる
技術と感性が本当に際立っている。
醜悪さや下品さに陥りかねない暴力的描写も、それらとは確実に一線を画してる。
独特な疾走感も常に健在だ。
 
やっぱ、凄ぇ作家だよ。