新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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殊能将之 未発表短篇集

殊能将之 未発表短篇集

殊能将之 未発表短篇集

独自の世界を作り上げていて、同業者の注目も浴びていた作者。
 
彼自身の批評家精神を、作品として結実させた人だったと私は思っている。
 
もっとオリジナリティに満ちた、ミステリをぶっ壊すミステリが
書けたはずの作家だと思ってたから、その寡作振りは惜しいと感じていた。
結局後期はほとんど作品を残すこともなく、亡くなってしまったからなぁ。
 
そんな作者だから、未発表原稿が見つかったのは、嬉しい出来事。
お蔵入りされてた若書きの作品ではあるけれど、喜ぶべきことだろう。
 
作品自体はまぁ微妙な味わい。読めたことで満足するレベルか。
ただまぁ「鬼ごっこ」の構図だとか、「精霊もどし」の最後の言葉だとか、
やっぱり批評家精神の発露なんじゃないかとか、強弁できなくはないけれど。
 
ただ、それよりも殊能将之が世に出る前日譚を描いた「ハサミ男の秘密の日記」が
本当にリアルで愉しいし、彼が本当はどういう人だったかも記してくれた
大森望の解説が読めて嬉しかった。
 
作品集としては、ミステリとは言い難いけど、採点は6点。