新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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片桐大三郎とXYZの悲劇

片桐大三郎とXYZの悲劇

片桐大三郎とXYZの悲劇

なんとレーン四部作に挑戦という、ハードルの高さに眩暈しそうな作品。
よくやろうなんて思い立ったなぁ。
まずは、その心意気に感嘆する作品。
 
ただし、短編集だけあって、ポイントは絞り込まれている。
深読みできるようなシチュエーションが様々にまぶしてあったりはするけど。
 
しかし、本書の最大の魅力は、実は
「いかに四部作の換骨奪胎をするか」という”形”ではなくて、
謎解きの論理性という”質”にこそあるのだと思う。
 
”論理のアクロバット”の、そのアクロバットさを感じさせる要素として、
一番重要なのは「どこに着目点を置くか」ということではないかと思う。
些細な証拠品だったり、ちょっとしたWHYであったり。
それが読者の思いもしなかった着目点(起点)であれば、
それだけでも充分にアクロバット性が確保されてると言えるのではないか。
 
本書はそれに成功していると思う。
元々その論理性がクイーンとの類似を評価されてる作者だけに、
大胆な試みに挑戦した本書では、なおさら力が入っていたのであろうか。
 
また、四部作を知っている読者こそをミスリードするという仕掛けも、
ユーモアをその本質に抱えてる作者ならではのもの。
めっちゃブラックな真相が描かれてる作品もあるにも関わらず、
読後感をすっきり爽やかなものにさせてくれる。
 
文句なく8点。たしかに年間ベストクラスの作品だと思う。
本ミスの2位は大納得。