新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

本格ミステリ書評サイト「幻影の書庫」の旧管理人のブログです。カテゴリー欄の全レビュー索引より、書評、映画評、漫画評、その他評の全一覧リストを見ることが出来ます。同じくカテゴリー欄の年間順位表より各年度の新刊ミステリの個人的ランキングを確認出来ます。

チェスプレイヤーの密室

原書房様からの頂き物。いつもありがとうございます。

作者名はエラリー・クイーンになっているが、いわゆる名義貸しの作品。
本当の作者はSF作家のジャック・ヴァンス
 
クイーンの名義貸し作品の中から、数作を選んで翻訳するシリーズになるらしい。
本作がまずその第一弾。
 
正編とされている代筆作品(スタージョン執筆の『盤面の敵』等)とは違って、
プロット自体が(少なくとも原案は)執筆者側にあるようで、
基本的にクイーン作品とは全くの別物。当然クイーン親子の出番無し。
執筆担当だったリーの監修で、文章は徹底的に推敲されているようだが、
さすがにそういうニュアンスは伝わらないからなぁ。
 
というわけでクイーン無関係の単独作品として評価せざるを得ないが、
本作はシリーズの先頭を飾るだけあって、なかなかの秀作。
 
原題には密室は謳われておらず、作中でも密室に対する議論や検討など
ほとんどされてはいないのに、いざ解明シーンになるとビックリ!
乱歩だったら嬉々として類別トリック蒐集に加えるに違いないという解説に同感。
 
個々のキャラクタの描き方も楽しかった。
もっとお母ちゃんに引っかき回して欲しかった気はするけどね。
 
クイーン成分はほとんどないが、まずまずの秀作。
どちらかと言えば、バカミス好きの方にお薦めかも。
採点は7点。