新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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これこそが本格

Twitterで、本格ミステリ・オールタイムベストアンケートをやってるという
案内を受けたので、10作品を選出してみることにした。
先程ツイート完了(ハッシュタグ #ATB本格)。以下、選考理由説明。
 
東西問わず10作品って、泣きたくなるよな極端な制限なので、
普通にオールタイムベスト選んじゃうのもつまんない。
王道中の王道だけを並べて終わりになっちゃいそう。
 
だったら、”本格ミステリ”のオールタイムベストなんだから、
もう”これこそが本格”という、自分の本格観を具現化したような作品ばかりで、
10作品を選んじゃおうという主旨に決めた。
 
まず自分の考える本格の頂点として、次の三作品がすんなりと決まった。
エラリー・クイーンギリシャ棺の謎」
鮎川哲也「りら荘事件」
鮎川哲也「ヴィーナスの心臓」

 
YやZも勿論凄い作品なんだけど、「本格」という視点だけで捉えると、
海外本格の頂点はこの作品じゃないかと。
で、国内の方はどうしてもこうなる。
同じ作者を二作も選びたくはないところだけど、本格ミステリの長編としての頂点も、
短編としての頂点も、どちらも鮎川哲也が書いてるんだから、しょうがない。
 
純度100%の純粋本格、私が考える”これこそが本格”の究極の形がこの三作。
 
続いてどうしても落とせないのがこの作品。
塔晶夫「虚無への供物」
究極であって、ある意味究極を超えた作品。
全てが本格として積み上げられていながら、最後に反転させる。
本格であって、反本格でもある、奇跡的な傑作。
 
そしてやはりいくら定番だろうと、これも落とせない。
アガサ・クリスティアクロイド殺害事件
本格の二大要素は「論理」と「意外性」にあると思うのだ。
そして本格であるからには、意外性は”犯人の意外性”が理想型。
その意味では、もうこの作品を今後越える作品は絶対にあり得ない、
その究極こそがこの作品で間違いないと思うのだ。
 
もう一つの要素、「論理」の意味で一作選び取るならば、この作品にしたい。
有栖川有栖「孤島パズル」
学生アリス長編四作品は、世界全体を見渡しても、クイーンの四部作に
最も近付いた作品シリーズと言ってもいいのではないだろうか。
ちょうどYの位置に属するこの作品が、その中でもベストの一作だ。
 
「論理」とは1と1を足して2を導き出すようなものとは限らない。
0でも3でも、時には無限大だって答として産み出すことが出来る。
そんな「論理」のマジックを操ることの出来る、東西の二人の巨人がいる。
★G・K・チェスタトン「ブラウン神父の童心」
泡坂妻夫「亜愛一郎の狼狽」

 
分野的には、これで一通り選び終えた気がする。
ここで、たとえば小泉喜美子「弁護側の証人」のような、
意外性に重点を置いた作品ならば、いくらでも挙げることが出来る。
勿論それらも間違いなく本格であると確信しているんだけど、
でも”これこそが本格”という作品とするのは躊躇してしまう。
 
私も古い人間なのだ。
”これこそが本格”は、やはり犯人当ての作品であって欲しい。
 
そこで最後の二作を選んでみた。
まずは「りら荘」が無ければきっとこの作品を選んであろう
高木彬光「人形はなぜ殺される」
そして、最少とも言うべき極めて狭い場で、犯人当てを成立させた
岡嶋二人「そして扉が閉ざされた」
 
自信を持って断言しよう。
 
ここで選んだ10作品。
 
これこそが本格だ!