新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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絶望トレジャー

原書房様からの頂き物。いつもありがとうございます。

絶望トレジャー

絶望トレジャー

長編なんだけども、短編集のような構成にもなっている。
章ごとに異なるテーマが現れて、興味深い展開を見せてくれる。
 
作者自身がサイバーセキュリティに携わった人なので、
一つ一つが荒唐無稽の域には達せず、ちゃんと地に足付いた
現実性をベースにして、説得力を持って語られるのが良い。
遺書の話だとか、いかにもありそうなサービスだし、
それが辿る道すらもいかにもありそうだし。
忘れ去られる権利なんかは、比較的最近実際のニュースで
目にしたことにも通じるような話だし。
 
サイバーセキュリティという新しい分野物の作品として、
非常に興味深いシリーズだとやはり思う。
 
一方、ミステリとしては長所短所それぞれに感じられてしまう。
意外な叙述的効果を見せてくれるけど、処理がいまいちスマートでなく、
読者としてちょっと混乱してしまうとかね。
 
三作目が読めてないけど、これが五部作の四作目なんだとか。
次回が完結編なので、そこではっきりするのかもしれないけど、
犯人役の造型がいまいちあやふやな感じがするんだよなぁ。
これは一作目から同じ。なんかすっきりしない。
完結編でもこのままの印象じゃないかってのが懸念されるところ。
 
まぁでも一つの新分野を創造して貫いてる点を評価して、
採点はちょっとおまけの7点。