新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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焼け跡のユディトへ

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第6回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞優秀作。

戦後間もない軍港の町で起こった不可解な連続婦女殺人事件。
被害者たちを結ぶ糸、そして心揺さぶる「動機」。
新人離れした筆致に島田荘司氏絶賛!

紹介文にこう書いてあるので言っていいのだろうが、
やはり着目すべきはこの動機だろう。
 
二つの思惑が綺麗に絡み合って、
とある人物像が鮮やかに立ちのぼる様が本書の白眉。
 
筆致は特筆するほど秀でているとも思えないが
(むしろ戦後風俗の描き方としては物足りなさも感じたので)
この人物造型はやはり魅力的だったと思う。
 
ただ、真相は綺麗に出来ているが、何故そう看破できるかは、
やはり数多の作品同様、説得力が弱い。
本格者の偏った見方として、そういうところがどうも
気になってしまう質なので、採点としては6点とする。