新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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追悼:連城三紀彦氏

19日に連城氏が亡くなっていたそうだ。
http://mainichi.jp/select/news/20131022ddm041060064000c.html
 
詩情性と意外性をこれだけ融合できる作家は、他に存在しない。
きっとこれからも氏を越える人は現れてはこないだろう。
 
個人的な思い出を語らせて貰おう。
うちの高校には必修クラブの一つに、「推理小説クラブ」というものがあった。
週に一度だが(それもちょいちょい潰されてはいたが)、
授業時間に堂々とミステリのお勉強(?)が出来るという、奇跡的な状況。
 
そこで最初の読書会としてコピーで配られたのが(このくらいは目をつぶってください)
出版されたばかりの「戻り川心中」の冒頭作品、「藤の香」だった。
 
当時は海外古典しか読み漁ってなかった自分には新鮮だった。
この作品一編ではそこまで強い感銘にまでは至らなかったものの、
その後作品集として「戻り川心中」に触れ、特に表題作に感嘆し、
それ以上に作品集全体としての美しさに、身が打ち震えたのだった。
 
これが日本物に目覚めるきっかけだったのかもしれない。
 
ちょうど時期も時期。
当時は社会派台頭の影で日干し状態だった日本の本格ミステリ界に、
雑誌「幻影城」から、連城、泡坂、栗本らが、ようやく恵みの雨を
降らせてくれ始めたのだった。
 
その後、島田荘司という偉大なるキー・パースンを経て、
新本格”という、たがの外れた時代がやってくるわけだが。
 
これらの流れに自分を導いてくれたきっかけが、今考えてみると、
あの必修クラブで配られた一編「藤の香」ということになるのだろう。
 
そういえば、ここしばらくは作品が途絶えていたけれど、
その前は「白光」「人間動物園」「造花の蜜」という、
いずれも自身の代表作となり得るような大傑作を、比較的立て続けに出してくれて、
ミステリへのジャンル回帰を見せてくれていたのに。
 
まだ、もっともっと傑作を読ませてくれるはずの人だった。
 
残念で、残念で、残念で、どうしようない気持ちだけど、
どうか安らかにお眠りください。