- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2011/01/25
- メディア: 雑誌
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厳選された五編のクラシック短編に、それぞれを選んだ作家のトリビュート短編を併せるという、絶妙な企画。元の短編の出来が良いほど、トリビュートも良かったりしたように思えたかな。
フランク・R・ストックトン「女か虎か」に対する山口雅也は、凝りに凝った作品で、これをベストにしよう。サロメにしたり、リドルを複数に仕掛けたりと志が良かった。但し、合図まで曖昧にしちゃったのはやり過ぎ。必然性もない上に、リドル自体も曖昧になって、すっきり感を欠けさせてしまってる。女性の正体がどちらにしても、合図は原作に合わせて明解であるべきはずだと思う。
トム・ゴドウィン「冷たい方程式」に対する石持浅海は、見事に自分のフィールドで状況を構築出来ている。これは凄いなぁってことで第二位に。但し、意外性もない上に、元作品の雰囲気と真逆のラストには、興を削がれてしまうけど。
ロバート・L・フィッシュ「アスコット・タイ事件」に対する村崎友は、パスティーシュのパスティーシュとしては、ほぼ完璧なのでは。これで一冊読みたいとも思うほど。ただ上記二作のインパクトは無いのと、暗号がも少しやりようあったのでは、と思えてしまったので、この位置に。
M・R・ジェイムズ「銅版画」に対する三津田信三は、企画自体から現実味を引き出すような怪談の語り口が面白い。
ヘンリー・スレッサー「気に入った売り家」に対する大倉崇裕は、スレッサーなら他に幾らでも選びようがあっただろうってのと、そのくせ全然トリビュートになってないってんで、とってもダメダメ。作品自体が面白くないわけではないけど、ちゃんと企画に合わせてくれなきゃだわ。文句なしに今回のワースト。