新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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蜃気郎1,2巻(完)

ミステリー’z 10周年記念宿泊オフでの本の交換会で、Y氏より頂戴したもの。二番目に選ぶ権利があったので、即決。随分前に読み上げてはいたのだけど、感想書くの遅くなってすみません。頂戴したのは双葉社発行の単行本だったけど、書影はこれしかなかったのでこれを貼っておく。

その文庫の公式の紹介文がこれ。


スマートでハンサム、華麗な怪盗蜃気郎は全てが謎に包まれている。アジトを転々と変え、変装し現れ、時には知り合う人の心に棲みつく。だがしかし、その素顔を知る者はどこにもいない。果たして彼は義賊か、それとも…?

でも、これよりWikipediaの概要の方が、本質を良く表していると思う。


裏社会で「悪の帝王」と恐れられる大怪盗「蜃気郎」が、自らの芸術的な犯罪計画の為に利用した人々を幸福にしてしまう、という「奇妙にさわやか」な筋立てが最大の魅力となっている。

三丁目の夕日」や「鎌倉ものがたり」の西岸良平のミステリ・コミック……と単純に一言で表すわけにはいかない作品集。
怪盗物というのは、正義の主人公を描いたものよりも、痛快爽快だったりするのが常だけど、先の概要にもあるようにちょっと「奇妙さ」が付加されてるのがミソかなぁ。
いかにもSFチックな展開を示しながらちゃんと現実に落とす作品も多い中、ぬけぬけとSFやったりもするので油断できない。
そういう荒唐無稽さが読みどころながら、基本は西岸良平らしく人情物であるところが、ちょっとちぐはぐな奇妙さを醸し出してる所以の一つなんだろうな。
それらの同居感の面白さ……って、それって結局やっぱり西岸良平の味ってことじゃないか。なかなかに西岸良平を堪能できる、ちょっぴり素敵な作品集でした。
Yさん、サンキュ!