新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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弘兼憲史SF作品集 ザ・スペース

島耕作」は読んでいないが、「人間交差点」でのヒューマン・ドラマの描き方は結構好きなので(原作の矢島正雄の力によるものが大きいのかもしれないが)、初期作品、しかもSFってことで近所の古本屋で購入してたものを読了。
 
これは時間物の変奏曲なんだな。
流刑星への囚人護送宇宙船の乗組員が主人公。浦島効果で往復の数週間が、地球上での数十年に相当するという設定。つまり、この隔てられた時間を主人公達がショートカットすることで、長い長い(はずの)ドラマを一瞬で描き出すという仕組み。
 
囚人となるのは基本的に”管理社会への反逆者”なので、読者の共感を得られる登場人物達ばかり。その中で時間物のエッセンスを巧みに交えながら、天才の行く末、闘士の選択、時を隔てる恋の成就……などの人間ドラマを描き出している。
ちょっと古臭さは感じるけど、なかなかに満足の一品でしたことよ。