新・三つの棺-「幻影の書庫」日記

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ソウ4

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ようやくAmazonからお届けされた購入品を鑑賞。
一作ごとに集大成とでもいうべき展開を示し続けているSAWシリーズだが、本作ではまたまたそれが顕著。ある意味「ソウ0」という位置付けも可能な作品であるということだけでなく、どうやら「ソウ3」から「ソウ5」で切り離せない三部作という構成を取っていると思われる。本作を見る前には、(シリーズ中グロ度最高という辛さはあるが)前作を見返しておくことをお薦めする。ちなみに本作のグロ度は比較的控えめ。冒頭の解剖シーンの気持ち悪さ以外は、生理的精神的な痛さはそれほど強烈すぎず、前作よりははるかにましになっていたと思う(それが物足りないという人も中にはいるだろうとは思うが)。
 
さて、肝心のネタだが、今回はさほど感心しなかったなぁ。
本作では二つの謎が扱われている。「ソウ2」以降の謎の中心である「ゲームのルール」(プレイヤーが為すべきこと)と、こちらは一作目を彷彿とさせる「ジグソウ(の後継者)は誰か?」という謎。
前者は相変わらずなるほどとは思わせてくれるが、ヒントが比較的露骨だったのと、ラスト恒例の瞬間フラッシュバック謎解きより前にネタを割っているので、衝撃というほどの意外性はない(フラッシュバックの中に「おお!」と思える1シーンはあるけどね)。
後者はこれが先程の三部作発言につながってくる。本作だけではあまりにも説明されなさすぎで、納得感が薄すぎるのだ。おそらくホワイは五作目に託されている。ミステリで云えば、アンフェアだろう。
まぁ勿論、これらの謎解きだけではない仕掛けも凝らされているわけなんだけどね。しかし、それも必然性はそんなに感じられなかったからなぁ。
 
そういうわけで、評価は過去最低。個人的順位だと、2=1>>3>>>>4 ってとこだなぁ。
同順位ながら2を先に置いたのは、単純なびっくり感よりも、執拗な伏線による納得感の方を高く評価してしまう、本格原理主義者としての性(さが)だろう。
 
見たら、人と語り合いたくなる映画ではあるよなぁ。ってなわけで、おまけのネタバレ感想も。
「ソウ4」見たよって人だけ、「続きを読む」をクリックしてね。
 
 
 
 
 
以下は、「ソウ4」(及びSAWシリーズ全般)の完全ネタバレです。ご注意下さい!!!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
いいですか? SAWシリーズのネタバレしますよぉー。
 
まずは、やはり今回の後継者に関して。
「最前列で見ている」というジグソウの特質から云って、拘束されていた二人の刑事のどっちかだろうと、実は真っ先に当たりを付けていた。だけど、完全にエリックの方に賭けてしまってたのだ。
だって、ホフマンとのつながりって、全然描かれてなかったわけだもの。一方、エリックの方はこれだけのたかが”駒”にするためだけに、半年間も生かし続けていたとは考え辛い。費用対効果があまりにも無さ過ぎでしょ。洗脳の時間にこれだけかかってたのだとすると、理解しやすいではないか。
一作目の死体に化けていたジグソウ、いつでも刑事の拷問にあいそうな二作目のジグソウ、簡単に死なせられる状態での三作目のジグソウを考えれば、自らをも過酷な状態に追い込んでの”最前列鑑賞”という、(おそらくは)ジグソウの美学にも通じるような状態じゃないか。
切り札とも思える拳銃を持つ展開に仕組んでいたわけだしね。よれよれの状態だとしか思えなかったはずなのに、最後の最後にはすくっと立ち上がって(元々はタフ野郎なんだもの)、例の台詞「Game Over」。ほら、こっちの方がエエェ〜〜ッ!感が強いやん。
……ってわけで、自分の中ではもう「エリック確定」だったんだけどね。二択で外しちゃったよ。
 
今回の最大の不満点は、このホフマンとジグソウとのつながりが一切説明されていないってことで、これは間違いなく五作目で描かれるのだろう。今回は二作目同様、時制トリックが使われていた(「ソウ3」と「ソウ4」は同時展開)わけで、五作目の始まりは今回の冒頭シーン(これが時間軸で云うと「ソウ4」のラスト)になるはず。
とすれば、せっかく後継者に昇格(?)したホフマンだが、五作目ではプレイヤーとなる可能性が高いと思われる。このテープからシリーズ最後のゲームが開始されるのだろう。「全てを支配した気分はどうのこうの」という台詞があったことからしても、後継者である人物にしか通じないゲーム・スタートの合図なのだろう。
これまでの4作全てが結局ジグソウ主導のゲームだったことからしても、シリーズ最終作だけ別の者の手によるものになるとは思えない。いや、たとえ”手”はそうだとしても、”脳”だけはそうでなくちゃ。やはり最後まで、SAWシリーズはジグソウのゲームなのだ。特にホフマンの中の人は敵役としての魅力なんか全く感じられない役者であることからしても、これはまず間違いないと思うのだが、さてどうだろうか?
 
自然に流れは、五作目予想の展開になってきたな。では、その流れで続けてみよう。
今回の「ソウ4」が、最終作への布石となっていることの予想が二つある。
一つは「プレイヤーを長期間監禁することもある」ということ。上記のエリック後継者説が覆った以上、これが描かれていた必然性はあまり感じられない。登場人物の再利用が好き、という制作側の単なる趣味でなければ(その可能性は高いが)、次への布石と考えても良いのではないか。
もう一つは「医学的専門知識を所有する人物がチームにいる」ということ。これまでも外科知識が必要そうなゲームが幾つも描かれていたが、今回の二人串刺しゲームなんかはとても生半可じゃ無理そうだものね。
 
この二つの布石を組み合わせると、自ずと結論は一つ。
五作目で登場する人物は「ローレンス・ゴードン医師」。これっきゃない。さすがに散々噂され続けてるだろうから(まさか日本だけってこともあるまい)、今更意外性はさほどないかもしれないが(意外性は他で稼いで貰おう)、「キタ━━━ヽ(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)ノ━━━ !!!」とお祭り状態で五部作を締め括るには、原点に戻ってのこのお方の再登場を凌ぐ趣向はないだろう。
 
医学的専門知識で云えば、勿論ジグソウ妻のジルも候補には挙げられるけどね。
今回私の不満点の一つとして、リッグのゲームに関しては時間が重要な鍵だったにも関わらず、時間内に辿り着ける保証がされている(つまりは誘導が必要とされる)とは思えなかったことが挙げられる。一方、「ソウ3」側のゲームに関しては、それが可能だった人物がいた。ジルである。尋問での告白をコントロールすればよいのだから。
こちらが真相に関わってくるのであれば、ジグソウが妻の目から隠した「ガラスの棺桶」みたいなものが布石だったのかもしれない。関係者全員をゲームに巻き込んでいたジグソウが、自分を捨てた妻だけはゲームにかけていないのは、逆に不自然。同じ痛みを共有した者として、ガラスの棺桶ゲームから生還した妻と共同でゲームを築き上げていたというのはあり得る話だ。
ジルを裸に剥けば、きっと背中にガラスによる無数の傷跡が残っているのだ(最終作でそのシーンが描かれる)。
 
まぁ、おそらくいずれも正解ではないのだろう。単純すぎるものね。それにもしも、どちらかが正解に近かったとしても、そのこと自体よりもそれを凌駕する意外性が用意されているはずである。
いずれにしても心からの満足感を感じられる内容で、シリーズを締め括って欲しいものだよなぁ。少なくとも謎はきっちりと完結させて欲しい。今回のようなやり口は、どうか”無し”ということで。次のシリーズに謎は引き継がれる、なんて野暮なことはしないでよー。
グロさも一段落したのかなということを期待して、最終作である五作目は頑張って映画館で見てみようかな(グロさに耐えられなさそうで、映画館に行けなかったチキン野郎……だったりして)。